実物盆栽に実を付ける その2  2007.06

前回は実物盆栽に実を付ける前提となる受粉について考えました。今回は受粉したはずなのに実が大きくならず落ちてしまう、そんな悩みについて考えます。

実がとまらず落ちてしまう原因はいくつか考えられます。第1は樹勢、第2は窒素過多、第3は剪定(切り込み)、第4は水不足、第5は気象。以上5点をあげ、それぞれについて考えてみます。

1,樹勢
実を大きく生長させるには樹勢、つまり樹の力・枝の力が必要です。「庭木の梅もどきには実は付くのに盆栽にはあまり付かない」という話を聞きます。花が咲き、更に実を大きくするには樹の「体力」が必要になります。
水分を十分上げられるしっかりした根、養分・水分を運ぶ形成層の働きが活発な幹・枝、緑色の健康的な葉、そんな樹勢の良い状態にしておけば実はとまります。
例えば、実生かりんは20数年経ちやっと花を付け始めたころは、各枝が細く花が咲いても実は付きません。更に数年経ち枝が太く力強くなってくると、実がとまるようになります。
また、実生の梅も長い年数を経て頭部のしっかりした枝から花芽を付けるようになります。花を付け実をとめ、更に実を大きくするには、それに対応できる枝・樹勢が必要となるわけです。
ただ、樹の大きさと付く実の数は、比例関係にあります。健康な樹でも樹の大きさに応じ自身で実の数を調整します。また、大きな実ほど樹の力が求められ、樹が小さいほど実がとまりにくい傾向があります。

2,窒素過多
盆栽に肥料を与えると、その中に含まれる窒素分によって樹の生長力が旺盛となります。活発な生長が促されることで新芽が伸びます。一方で実物盆栽の花期・結実期には、施肥により樹の生長と実を付ける働きのバランスが変わり、生長が優先され、そのため着果しにくくなることがあります。実物盆栽の開花期から受粉・結実の時期には、その前も含め施肥は控え、実が固まった後に与えるのが安全でしょう。

次回へつづく

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